バレリアン

2023.04.05

 

 

 

配達区域の終盤にある緑道の桜並木が、ずいぶんと緑に染まってきました。

碧くなっていく緑道をみると、なぜか「もどってきたなぁ」と思います。

最近は、あいかわらず「懐かしJ -POP」を聴きながらすごす日々が続いています。

歌謡曲でしか取り戻せない「何か」があって、その「何か」を追い求めてJ-POPばかりを聴いているような気がします。

しばらく、「この感じ」を続けようと思います。

 

 

 

 

この広い世界で 巡り会う喜びを言葉じゃ言い表せないね

だから僕達は微笑み 色鮮やかに過ぎる秋をドレミで唄って

冬を背に 春の木漏れ日を待ち

新しく生まれ変わる 誰かを守れるようにと

 

 『千の夜をこえて』 Aqua Timez

 

 

 

奥沢のスタバの木目のドアを開けて外に出た。

日曜日だった。

目の前には桜並木がある。

桜が並んだ通り道は、人で賑わっていた。

 

ベンチにすわって何かを食べながら談笑している人がたくさんいた。

アイスクリームを頬張る女の人を、小さな女の子が羨ましそうにみていた。

 

さっき「治癒力」について考えていた。

だからなのか、近所にある「ハーブのお店」に足が向かっている。

桜並木の方には向かわず、手前の道を左に曲がって、坂道を登った。

 

坂道をすこし上がったところで右に曲がると、いい感じの雑貨屋さんがあった。

すこし寄り道。

色のバリエーションが豊富で、なおかつ俗っぽくない感じの靴下が目にとまった。

靴下は足りているからいらないけれど、「今ある靴下がダメになったら、こんな感じの靴下を買うのもいいなぁ」と思った。

 

「やっぱり、”足元”に注意を払うのは人生の基本なのかな」みたいなことを考えながら、道をまっすぐに歩いていると、目的地だった「グリーンフラスコ」というハーブのお店に着いた。

すぐ近くに、このまえバイト先の上司に連れて行ってもらった、「ふぐ料理のお店」があった。

 

ドアを開けてすぐ左側に本棚が並んでいた。

店主?の男の人がピックアップしたものらしい。

並んでいる本から、「意味の香り」がした。

彩り豊かな本が並んだ棚をみて、胸が躍った。

 

本棚の前で足をとめて本をパラパラめくっていると、女の人が「よかったら試飲どうぞ」と言いながら小さな紙コップを渡してくれた。

「びわのハーブティ」だった。

 

すごくおいしかった。

ゆっくり香りを愉しみながら温かいハーブティを啜りながら、引きつづき本棚を眺めた。

「試飲」とは言え、嬉しい貰い物だった。

 

落ち着いた感じのお客さんばかりの店内を、黄色いマウンテンパーカーを羽織った痩身の男がキョロキョロしながら徘徊するのは、なんだか「変な感じ」なんじゃないかと思った。

けれど、とりあえず”ニコニコ”しながら楽しむことにした。

楽しくて、気分が踊っていた。

他の惑星に観光をしにきた、異星人(エイリアン)のような気分だった。

 

結局、さっき試飲した「びわのハーブ」を手に取った。

それから、「バレリアン」という種類のハーブも手に取った。

そのふたつを、レジで店員さんに渡した。

 

「落ち着きのないやつ」だとバレないように、「落ち着いた人」のフリをして、スマートにお会計をすませた。

でもきっとバレただろう。

「落ち着きのないやつ」だと、とっくにバレていたのだろう。

最初からきっと、バレていたのだろう。

そう、渡したのは「バレリアン」だから!

 

 

つまらない言葉遊びが忙しなく頭の中で展開する、落ち着きのない日だった。

かえってゆっくりハーブティーを飲もうと思った。

 

桜並木には、あいかわらず忙しなく人が集っていた。

賑やかな並木道では、穏やかに桜が舞っていた。

穏やに舞い落ちる桜を眺めていると、すこし気分が落ち着いた。

いい時間だった。

 

 

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