パチパチ

2023.11.11 

 

 

雨がふっていた。小雨だった。折り畳み傘をカバンのなかにいれて、八幡野港にむかってあるいた。

雨の日に歩くと、いつもより視界に入る人がすくない。ひとがすくないと、なんだか気持ちがいい。

 

途中、雨足がつよくなった。傘をさして歩くことにした。

雨に濡れるときもちわるい。だけど、ぼくは雨に濡れるのがそんなにきらいじゃない。マウンテンパーカーに雨粒が当たる「ポツポツ」という音とか、スニーカーで水たまりの中にはいっていくときに足が「ビチャっと」する感覚とか。そういうのが、きらいじゃない。

 

折り畳み傘に雨があたっていた。「ポツポツ」という音がしていた。

イヤホンで音楽をきいていたけれど、イヤホン越しに、「ポツポツ」という音がきこえていた。

 

このときは、King Gnuの『硝子窓』を聴いていた。最近、気に入っているのである。『SPECIALZ』もいい。

King Gnuの最近の二曲をきいて、すこしまえに好きだった、『逆夢』と『一途』があまり好きではなくなったなぁと思った。

最近の二曲の方に、なんだか未来をかんじるのである。

 

八幡野港についた。あいかわらず雨がふっていた。King Gnuも、雨も、あいかわらずうたっていた。

うたをきいていると、やっぱり、港には未来があるなぁとおもった。

港は、船が出発する場所である。そして、船が帰ってくる場所でもある。

海に出ていったり、海から帰ってきたり。海辺を行ったり来たりする船というものや、船が泊まっている港というものが、ぼくはとても好きなのだ。

 

港で、だれかを見送ったり、だれかを出迎えたりした。

波打ち際ではしゃぎながら、いつもだれかをみていた。

波の音をききながら、いつもだれかをおもっていた。

それだけでいいとおもった。

でも、やっぱりそれだけじゃダメだとおもった。

 

雨がつよくなってきた。音が、「パチパチ」となっていた。

つよくなった雨の音をきいていると、雨に励まされてるようにかんじた。

「パチパチ」という音は、だれかの拍手みたいだった。 

   

 

 

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