ポリッピー

 

 

 

伊豆高原駅についた。

海岸沿いをはしる電車のなかで眠ったり目覚めたりをくりかえしていた。

 

窓際の席にすわっていると日差しがさしこんできてあつかった。

暑くて窓からはなれたかったけど、景色をみていたい気持ちが勝った。

結局、暑さと引き換えに景色をたのしんだ。

なんでもかんでも欲しがるのは自然に反するのだろう。

 

「No pain No gain」という言葉をずいぶん昔にLINEの”ひとこと”に設定していた。そのときのことを思い出した。

駅についたとき、新しい職場の送迎バスがくるまでに時間があった。

お土産屋さんで「ポリッピー」とお茶を勝って、待合室で時間を待つことにした。

 

ポリッピー。

豆を揚げた、カリカリするおやつ。

なんとなく買ったけど、今日の気分に合っていた。

 

糖分をとると血糖値がぐらつく。

血糖値がぐらついて気分が不安定になるので、糖はちょっと控えることにした。

一応、このあと「新しい場所」に向かうことを考慮していた。

不安定な気分で挨拶するのは、すこし失礼な気がした。

  

変なところに「変な真面目さ」がある。

気を遣うところはもっと他にあるとおもったけど、「まぁいっか」と思った。

  

待合室で、『反解釈』の続きを読んだ。

『精神分析学とノーマン・O・ブラウンの『エロスとタナトス』』を読むことにした。

 

ブラウンのことは松岡正剛さんの『千夜千冊』で知った。

千夜千冊にはかなり影響を受けた。

「よくわからないけど、なんかわかる」という感覚をいつもくれる。

 

松岡さんは吉福さんとおなじ匂いがする。

杉本博司さんとか、田中泯さんとか、あの辺のカルチャーの流れにかなり惹かれた。

 

魅力的な人が多いから面白い潮流ができるのか、面白い潮流があるから魅力的な人ができるのか。

どっちでもいいけど、自分も面白い潮流の中に飛び込んでいきたい。

限りある時間の中で、魅力的な人たちに出会いたい。

ぶっ飛ばされて、頭が真っ白になって、「自分」を変えざるを得ないような体験をたくさんしたい。

そんなことを考えているから、自分をぶっ飛ばしてくれそうな人や本に出会うと嬉しくなる。

 

ブラウンの批評を読みつつ、千夜千冊も読み返した。

今のタイミングで読めて良かったと思った。肉体と精神の分裂を癒すこと。それがいまのテーマのひとつ。

 

その「癒し」の作業を、「新しい場所」でやっていきたい。

きっと「痛み」はともなう。

でも、痛みのない「癒し」なんかきっと存在しない。

 

「痛みがない癒しなんかない」というと、体育会系のあつくるしい「シゴキ」が思い浮かぶ。

でも、必要なのは「シゴキ」なんかじゃない。

必要なのは「楽しさ」のようなもの。

「楽じゃないけど楽しい」と感じられるようなもの。

ただの「楽」とその「楽しさ」のちがいはなんなのか。

きっと「ある種の真面目さ」があるかどうかだ。

  

「ある種の真面目さ」とは何なのか。

自分でもまだちゃんと理解できてないけど、さっきの自分が変な真面目さを発揮してポリッピーを食べたのはそこにつながっている。

あの「変な真面目はさ」は、「ある種の真面目さ」を育てる”種”みたいなものなんじゃないかと思った。

 

ポリッピーのパッケージ裏の「添加物の文字の羅列」を眺めながら、「ズレてるけど、ここから辿っていけばいい」と思った。

 

 

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