落石

2022.09.16

 

 

 

風呂上がりに机の上で本の続きを読んでいたらやたらと喉が乾いてきた。

spectator』をパラパラめくったり、『ユングのアイオーンの解説本』に手を伸ばしてみたり、『裸のランチ』を読んでみたり、なんだかあたふたしていた。

いてもたってもいられなくなって外に出て、自動販売機で「デカビタ」を買った。

 

昨日の夜、近所を散歩していると気分がソワソワしてきて、「まいばすけっと」に入って袋に入ったラムネ味のガブリチュウを買った。

砂糖の塊。

不安になると糖分が欲しくなる。

 

家に帰るまえに歩きながらガブリチュウを食べた。

蛇口から大量の水が出てシンクを叩きつけるみたいに欲が出てきた。

家に帰り着くまえにセブンイレブンによって、またお菓子を買った。

ポテトチップス、チロルチョコ、キットカット。

 

左腕につけたグルコースモニターでグルコース値を確認した。

200ぐらいのところから徐々に下がっていくグラフを見て、「このままじゃ色々と急降下していくぞ」と思った。

 

このまえ夢で崖から飛び降りるような感覚に襲われた。

ぼくは山道を歩いていた。

そしてガードレールの外側に落ちていった。

岩壁のようなところに沿って落ちていった。

するとそこからスキージャンプをしている映像に切り替わった。

グラフが下がっていくみたいにスキー場の斜面を下っていくと、下り終わったところには小さな部屋があった。

野球部の部室のようなところだった。

学校にたどり着いたのだ。

その部室にはユニフォームを着た部員がいて、ぼくはその坊主頭の部員に事情を説明した。

どういう風に説明したのかはわからない。

夢の中の特別な言語を使ったのかもしれない。

いや、夢の世界では言葉がいらないのかもしれない。

ともかく、学校の中から「外」に出ることができた。

 

最近、「内から外に出ていく」ということを考え続けていた。

だから、それが象徴化されたのかなぁと思った。

心の中に、「外に出たい」という願いが強く巣食っている。

心は監獄だ。

 

血糖値が乱高下していると気分が落ち着かなくなるけれど、その上がったり下がったりする気分とは別の意識の波もあって、こっちの波を安定させるとハイなまま意識が明晰になる。

変な意識のトリップが始まる。

意識の波が二重構造になっているのだ。

糖分で当分ジャンキーになっているぼくはこの変なトリップの常習者だ。

 

そう、ぼくは監獄のなかで砂糖を薬石にする禅僧なのだ。

いや、これは砂糖の落石という前奏だ。

いやいや、まだまだ人生という演奏は始まったばかりなのだから、そんなに思い詰めなくて良いじゃないか。

あぁ、今日もやっぱり野狐禅だ。

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