return here

2022.12.29

奥沢のスタバでソイラテを飲んだ。

 

ソイラテを飲み終えて、空になったマグカップをレジの隣の返却口のところに戻そうとした。

だけど、間違えてしまった。

注文したドリンクを「渡すところ」に返してしまった。

返却ミス。

スタッフのお姉さんは優しく微笑んで、「大丈夫ですよ」と言ってくれた。

気持ちを込めて実直に「ありがとうございました」と言った。

けれど、マグカップは”ズレた場所”に返してしまった。

返却口の「return here」と書かれたプレートから”ズレた場所”に立っていた。

恥ずかしくて、挙動がぎこちなくなってしまった。

 

スタバを出て、自由が丘周辺を散策した。

明日も自由が丘にくる予定だ。

友達と飯を食って買い物。

ぼくに負けず劣らず”ぎこちないヤツ”だけど、明るくて面白い友達。

 

明日のことをすこし考えながら、冬の日差しを浴びた。

分厚いマウンテンパーカーに吹き付けてくる風の重み。

胸の辺りで留めたチャック。

その上の首元の開けた空間。

そこに冷気が入ってきて、肩がすくんだ。

 

しばらく歩いていると、ABCマートがあった。

入り口のドアが開いていたので入ったけれど、中にいた店員のお兄さんから「すいません、まだ空いてないんですよ‥‥‥」と言われた。

return here。

営業時間前だった。

 

「あっ、そうなんですか」と白々しい顔をしてドアの外に出たあと、ポケットからイヤホンを取り出して、はめた。

清水翔太さんの『HOME』を流した。

 

近頃はいつも、家の近くをちょろちょろと散策していた。

いつも何かを探していた。

でも、何を探しているのか自分でもよくわからなかった。

だけど、『HOME』を聴いていると、探していたものが何なのかすこしわかった。

 

たぶん、「家」に帰ろうとしていた。

でも、帰れなくなってしまった。

「家」とはいったい何なのか、わからなくなった。

 

「return here」のプレートが、見つからなくなった。

どこに帰ればいいのか、わからなくなったのだ。

 

けれど、見つかったものもある。

”返そう”としている自分の気持ち。

それは見つかった。

 

まずは、「return here」のプレートを見つけることから。

返すべきものを返すこと。

返したいものを返すこと。

そこから始めればいい。

あんまり急がなくていい。

焦らない方がいい。

 

ぎこちなくても、焦らずに歩き続ければ「返す場所」は、きっと見つけられる。

「帰る場所」も、いつかきっと見つかるだろう。

 

頭と心を整理しながらの散策。

自由が丘の街歩き。

気分が落ち着いてきた頃、散策を中断して駅に向かった。

駅に着き、人が混み合う改札を通って、ホームで次の電車を待った。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です